家族信託のことなら東京・新宿のカリーニョ行政書士事務所

最近注目されている相続の仕組み=家族信託

1  「親が認知症かも?」との気づき
2  親御さんへの説得
3  契約書作成
4  信託契約書を公正証書にする
5  信託財産を受託者に名義変更(信託登記)
6  金銭を信託するための銀行口座を開設する
   様々な活用事例
   つぎは家族信託の必要性について説明します。
   費用はどのくらいかかるの?

「親が認知症かも?」との気づき

 新型コロナウイルスのために、しばらく制限されていた病院・施設の面会が一部解除され、早速、施設や病院に面会に行かれた方も多いのではないでしょうか?
また、久しぶりに帰省された方もいるかもしれません。
 親御さんに久しぶりに会えて、嬉しさもひとしおですね。
 一方で、親御さんが何回も同じ話を繰り返す、言葉がなかなか出てこない等、認知症が始まったのかなと感じてがっかりなさった方もいるかもしれません。

 家族信託という存在を考えるのは、この時がラストチャンスです。

■家族信託契約ができる限界
家族信託はするのには限界があります。
「自分の名前がわからない」「家族が誰かわからない」といった状態が定着してしまうと法定後見人に頼らざるを得なくなります。
法律行為(たとえばパン屋でパンを買うのも、売買契約という法律行為です)をするには、「意思能力」が必要であり、「意思能力」がないと、法律行為が無効になってしまうので、家族信託もできなくなってしまうのです。
もっとも、認知症はその程度によっては、まだまだ家族信託ができる可能性があります。
重度の認知症の場合には、この「意思能力」がないと判断されてしまいます。
とはいえ、軽度の認知症では、意思能力はまだまだ認められることが十分あります。

では意思能力があるかないかの判断は誰がするのでしょうか?
これは、預貯金であれば、預けられている金融機関の支店長(以前、某銀行に問い合わせたところ、具体的な一律の判断基準はないとの回答がありました)、不動産であれば、不動産屋さん、その後、登記移転の際は依頼する司法書士、または登記官でしょう。

銀行など金融機関で、一度「法定後見人をつけてください」と言われてしまうと、預貯金は凍結されてしまいます。法定後見をつけるまで、その方の預貯金の出し入れはできなくなるのです。
 その前に、ぜひ家族信託で、財産を家族に移転させましょう。

なお、今後、親の財産が凍結された後、その財産を誰も使えなくなる期間はどんどん伸びていきます。
なぜなら、癌、心筋梗塞や脳卒中等は治療法がどんどん進んで、延命し、人生100年時代といわれているのに比べて、認知症は、現在の医学では、進行を遅らせても、元の状態に戻すのは困難といわれているからです。
 認知症と診断されると「本人に判断能力がない」とされるので、亡くなるまでの長い期間、財産凍結されることになりかねません。

 
認知症が重症化して、銀行等で「法定後見人をつけてください」と言われたら?
法定後見人は裁判所が選びます。家族が法定後見人になれる確率は3割にも満たないそうです。ほとんどが弁護士等第三者になってしまいます。そうなると、高い報酬を第三者である弁護士等に支払わざるを得なくなることになってしまいます。さらに、後見人は一度預かった財産を出すことに、非常に慎重で、柔軟な対応は期待できません。特に不動産を処分するのはハードルが非常に高いです。

重症化する前に家族信託を検討しましょう!!!



親御さんへの説得

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家族信託をやった方がいいと決断したら、つぎは親御さんに家族信託を勧め、家族信託契約を結んでもらえるように説得しなければなりません。

■しつこく勧めると意固地になってしまうので注意!
家族信託の必要性を親に言っても、「俺は絶対ボケない」「まだまだ、自分で管理てきるよ」「そんな話はしたくない」「銀行に任せてある」などと反論されて話にならない、というお悩みをよく聞きます。

 では、どんなふうに言えば納得してくれるのでしょうか。そこは親御さんの性格によって、異なる気がします。そこでタイプ別のアプローチ方法を少しご紹介します。

・理詰めで頑固系の親御さん
「お父さん(またはお母さん)は、もちろん知ってると思うけど、家族信託ってのがあるんだよね?あれどう思う?」と切り出しましょう。続けて、
「もちろんお父さんまたはお母さんはまだまだ、認知症とかにはならないと思うけど、今後転んで骨折して長期入院とかで、銀行にお金預けっぱなしにすると、休眠口座となって、手数料がかかる可能性もあるよね。また、万が一、病気が見つかって療養しなくちゃならなくなると、お金の管理が難しくなるよね?お父さんとお母さんの使ってない口座だけ預かろうか?家族信託は信託財産をどれにするか自分で選べるから、いいよね」

・家族思いの優しいタイプ
「お父さん(またはお母さん)いつも、私たちのこと考えてくれてありがとう。実はね、お父さん(またはお母さん)には、今後も長生きしてもらいたいんだけど、もしも病気や怪我で、口座とか分からなくなったときはさ、私たちの方がすごく困っちゃうんだよね。そうならないために、私たちに管理任せてくれない?」

・少し認知症が入ってきた親御さん
「お父さん(またはお母さん)、銀行の口座とかパスワードとか全部わかる?今後、口座ほったらかしにすると、お金手数料で取られちゃう可能性あるんだって。少し整理した方がいいんじゃない? 家族信託すると、もし、忘れちゃっても、安心だよ」

 いかがでしょうか?
 いちばんよくないパターンは、乗り気じゃないときにしつこく勧めてしまい、親御さんも意固地になってしまうことです。拒否されたら一度あっさり引いて、ちょっと親御さんの身体が弱ってる時に、優しくしてあげて、必要性を説くといいでしょう。




契約書作成

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親御さんの説得に成功したら、次は契約書の作成です。
まず、家族信託の契約書には信託の目的条項があります。
この目的はそれぞれの家族により異なります。
例えば、
①親が認知症や病気により意思判断能力が低下する恐れがあるため、財産を家族に託しておきたい。
②子どもたちに不動産を平等に相続させたいが、共有名義はトラブルのもとなるので避けたい。(遺言的機能)
③現在所有している共有不動産について、共有者間でトラブルが起きないようにしておきたい。
④認知症の妻に後見人をつけなくて済むように財産を遺したい。
⑤再婚したのだが、再婚相手との間には子供がおらず、前妻の子供がいるので、その子どもたちに相続させたい。
⑥親なき後に障害のある子の生活を保障したい。

このようにいろいろな目的を達成できるように作成しなければなりません。

家族信託の目的が決まったら、次は信託する財産を決めます。信託の対象にできるのは、主に現金、預金、株式などの有価証券、不動産などです。管理や運用をまかせる財産を何にするかというのは非常に重大なテーマなので、家族間で納得するまで話し合って決めましょう。

家族のうちの誰が受託者(財産を預かる人)になるか。期間が満了になった後の財産をどうするか。誰が利益を受けるのか等 決めなければいけないことは多々あります。

とても複雑で法律知識が必要なので、自分で作成するのは危険です。不備があって、将来家族信託契約書があるがためにかえって家族が揉めてしまう等も予測できるからです。
家族信託の専門家に任せるのがいいでしょう。


契信託契約書を公正証書にする

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信託契約書を作成したら、公正証書にすることをお勧めします。家族信託の効力をより確実なものにすることができます。一度、公正証書にすると、後からその内容について異を唱えたり内容をひっくり返すということは非常に困難になります。特に、現金(預貯金・株式含む)を信託する場合には、公正証書にする方がいいです。なぜなら、信託をするときには、必ず、信託用の銀行口座を作ってもらいますが、その際、名義が変わってしまうので、税務署に贈与と勘違いされ、贈与税がかかってしまうといった危険を避けるためには、公正証書のほうが、信用性が高いからです。
加えて、契約書を紛失してしまったときのリスクも回避できます。
しかし、信託財産が不動産だけのときは公正証書にする必要はあまりないです


 

信託財産を受託者に名義変更(信託登記)

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信託財産が不動産のときは、その所有権を委託者(財産を預ける人)から受託者(財産を預かる人)に登記を変更する必要があります。
この登記移転はあくまでも、信託のためなので、贈与とは異なります。信託のための移転登記であることが登記簿に記載されます。
この登記があることで、受託者はその不動産を売却したり、修繕したりすることが可能となります。

金銭を信託するための銀行口座を開設する)

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かりに、信託財産が不動産だけだとしても、受託者(預かる人)には、新たに銀行口座を作ってもらいます。そして、その口座でお金の管理をしてもらいます。
なぜ、新たに作るのかというと、受託者の個人的なお金との混在を防ぐためです。
銀行によっては、名義を「委託者○○受託者××」としてくれるところもあります。

以上、実際の流れを説明しました。



つぎは家族信託の必要性について説明します。

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 1「ペットのための信託」高齢化時代 自分が死んだ後、飼ってるペットはどうなるの??

ペットをわがに子のよう大切に思っている方は、自分が死んだあと大切にしてきたワンちゃん猫ちゃんが幸せに暮らせることを願っています。
いままでは遺言を残すという方法で、飼い主が特定の人(相続人等)に、ペットの面倒をみてもらう代わりに、一定の財産を相続(遺贈)させるという一般的でした。
しかし、この方法では、任せた人がペットを最後まで面倒をみてくれるか、また、お金だけもらってペットは放置される恐れがありました。

そこで登場したのが、「ペットのための信託」です。これは、飼い主が元気なうちに、あらかじめ信頼できる人(親族・友人)にペットおよび、それを飼育・管理するために必要となる資金を「信託」し、その資金で第三者(動物愛護施設・里親等)に可愛いペットの面倒をペットが死ぬまでみてもらうという仕組みです。

 

ケース
高齢のXさんが、1匹のワンちゃんと暮らしています。長男のAさんが近くに住んでいますが、そこはペットを飼えないマンションまたはAさんの奥様Bさんが犬アレルギーで、犬のお世話をお願いすることは難しい状況とします。Xさんは自分で犬の世話ができなくなったとき(入院や認知症発症等)は、なるべくA・Bさんの面倒をかけず、信頼できる動物愛護施設等に預けて、次の里親に引き取ってもらいたいと希望しています。そのために、自分が持っている財産(預金など)を、犬の世話や動物愛護施設への支払いに使ってもらいたいと考えています。
信託でできること
このような場合、Xさんを委託者(お金を預ける人)、Aさんを受託者(お金の管理を引き受ける人)、Xさんを当初の受益者(利益を受ける人)として、信託契約を結びます。その内容は、「Xさんが元気なうちはXさんが犬の世話を行う。入院・認知症等で世話ができない状態になったら、Aさんが管理を行う」としました。Aさんに管理が移ったら、あらかじめ決めておいた動物愛護施設等に犬を預ける。犬の世話や動物愛護施設に預ける費用も、Xさんから管理を預かっているお金から、Aさんが支払います。
このとき、Aさんを監督するために、第三者の監督人を付けることも可能です。
Xさんが亡くなった場合は、管理をしてくれたAさんに残った財産を渡すという約束もできます。
このような信託契約を締結しておくことで、Xさんは自分で犬の世話ができなくなっても、契約に基づいてAさんに安心して管理を任せられます。Aさんは犬が里親に引き取られるまではしっかりと管理をする高い義務があります。信託で書いておけば、犬が無事に里親に引き取られるか、または亡くなると、Xさんからの預かった財産をもらえることもできます。遺言書と違って、信託契約はその内容に基づいて財産を管理処分する権限しかないので、「財産だけもらってペットは処分」のようなことはできません。
こうした仕組みを使えば、愛するペットの行く末も心配しなくて済むようになりました。家族のように大切なペットがいる方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

2 浪費癖のある夫(または妻)の財産管理               

ご夫婦の一方がギャンブル・不倫の交際資金・自分の趣味の過大な投資等に家族の生活費を浪費してしまい、生活に困る家庭は少なくありません。
だからといって、浪費した方は自分のお金をすべて相手に渡し、手元になにも残らないのも嫌なものです。
そこで、一定の金銭を、浪費家の相手方に信託し、その資金を管理・運用してもらうのはどうでしょう?

例えば、以下の様な事例があります。
Aさんは、週3でパートをしている奥さんのBさん、お子さん2人と暮らしています。Aさんは結婚前から持っていた貯金5000万円(法律用語でいう「特有財産」)に加えて、結婚後貯蓄した1000万円を持っており、名義をAとして銀行に貯金しています。ある日、Aさんは会社の同僚に連れていかれたキャバクラでCさんと出会い、Cさんの下に足繫く通うようになりました。そのうち、二人きりで飲みに行ったのがきっかけになり、Cさんと不倫を始めてしまいました。Aさんは若くていつも綺麗にしているCさんに溺れてしまい、Cさんの心をつなぎとめるために、高級レストランやブランド品のプレゼント、高級温泉旅館等いろいろ金銭を貢ぐようになりました。
派手に遊んでいたAさんの行為はあっという間にBさんにばれて、Bさんが子供たちを連れて家を出て行ってしまいました。
そのうち、不倫を楽しんでいたCさんもしょぼくれたAさんに呆れて、去っていきました。そこで、Aさんは心底反省しました。
二度と浮気はしないと誓いBさんを迎えに行ったAさんですが、Bさんは信用できません。
そこで、BさんはAさんに自由なお金を持たせないことにし、「あなた名義の貯金を全部私に渡して!」と詰め寄りました。
しかし、お金を全部Bさんに移してしまうと、贈与税がかかる可能性があることや、一部は特有財産なので、納得いきません。
信託を使った対応策
そこで、考えたのは、Aさんのお金をBさんに信託するという方法です。
これなら、特有財産はAさんの物であることに変わりないし、Bさんが厳重に管理するので、不倫のため等浪費できません。

すなわち、Aさんを委託者、Bさんを受託者、Aさん、子供たちを受益者として、信託契約を結びます。

一般的な信託と大きく異なるのは、この信託の終了事由に離婚があるということです。
離婚した場合は、信託は解約され、信託されたお金は、Aさんの特有財産部分はAさんに戻ることになるのです。
これなら、AさんもBさんも納得することができます。

3 不動産の共有化対策
不動産を相続等で共有にしてしまうと、こんな困りごとが

Aさんが駅から徒歩5分に小綺麗なアパートを所有しています。現在は満室で、アパートの家賃収入が毎月入るので、ゆとりある生活を送っています。Aさんの子供は3人です。しかし将来、Aさん亡きあと、不動産を三人で共有して相続してしまうと、大規模修繕、立て替え、売却等は三人全員の合意必要となります。もし、一人でも、修繕に反対したり、認知症になってしまうと、老齢化したアパートをどうすることもできない事態に!!!

信託を使った対策
家族信託を利用して、アパートをアパート本体の所有権と家賃収入を得る権利に分けることができます。ここで、アパート本体は元本受益権といい、家賃収入を得る権利は収益受益権といいます。
こうすることで、共有にしなくても、実質的に子供3人を平等に相続させることができます。
分割例
長男(持ち家あり・安定した収入あり・しっかりもの)→アパート本体の所有権
次男(病弱・独身)・長女(バツイチ子供2人・シングルマザー)→家賃収入半分ずつ

4 妻が認知症発症―自分が死んだら長女に妻の面倒をみてもらいたい
ケース
あなたは妻とふたり暮らし。娘と息子は、独立して遠くに住んでいる。
 最近、50年以上も連れ添った妻に、認知症の傾向が現れてきた。
娘も息子も、今さら同居できる環境ではない。
認知症の妻をおいて、『私は先に他界するかもしれない』。

こんな時、遺言を書いておけば安心???
妻には娘と息子には預金各2千万円ずつ
これで、妻は住む所に困ることもないし、お金の心配もない。
でも、本当にこれでいいのでしょうか?

実は奥様の認知症が悪化したり、自宅でひとりで暮らせないほど認知症の程度が進んだ時には、奥様の預金が凍結され、しかも相続で不動産の名義は認知症の妻に移転しますが、不動産の売買は法律行為なので、買い手が現れても、認知症の妻とは契約できないです。そうなると、自宅を売って、そのお金で施設や介護付き有料老人ホームに移った方がいいと考えても売れなくなってしまいます。
このように、遺言では全く安心できません。
では、どのような対策をすれば、残された妻が安心して老後をすごせるのでしょう?

家族信託ならそれができるのです。

1 自分が生きているうちに、娘又は息子に財産管理を任せる(信託する。任せた方を「委託者」任された方を「受託者」と呼ぶ)
2 この財産は娘又は息子に贈与したわけではなく、自分の利益(又は夫婦の利益)のためにしか使われない。(利益を得る方は、「受益者」と呼ぶ)第1次受益者は自分である。
3 信託した財産は、自分が死んだ後は、妻が第2次受益者となって、妻のためにしか使われない。
もちろん、当初の娘・息子の相続分(各2千万ずつ)は、娘・息子に相続させるようにすることもできます。そのようにするには、当初、妻に残そうと予定していた自宅と預金3千万円だけが信託財産になるように契約書にきちんと記載しておく
4 受託者である娘又は息子は、母親が生きているうちは、父親に任された信託財産を使って、母親が安心して暮らせるように、配慮する。
5 娘又は息子がきちんと母親の経済的な面倒をみるように、監督人をつけることも可能です。

このような仕組みを作れば、遺言ではできない当初の自分の思いが達成できるのです。

5 仲の悪い姉妹―遺言の書き換え合戦
X(78)は、妻に先立たれ、X所有の自宅不動産に一人で元気に暮らしています。
近所に長女Aの家族が住んでいて定期的に会いに来てくれているので、今のところ生活に不安はありません。もしXが将来認知症になった際には、できる限り在宅介護をしてほしいと思っていますが、長女家族に負担もかけられないので、いつかは自宅を売却し、有料老人ホームに入居をしたいと考えています。
姉妹A・Bは、仲が悪く、二女B家族は遠いところに居を構えているので、めったにXに会いにきません。そこで、Xのいざという時の緊急対応や介護、財産管理等は、長女A家族に任せることに決めています。
将来、自宅売却と老人ホームへの入居手続きを進める際に、Xの判断能力の低下が著しければ、自宅売却にはAに売却手続きをしてもらいたいと希望しています。
また、長女A家族の介護負担を考慮して、将来のXの死亡時における財産の分配を長女Aに多くすることについて、その合意内容も有効な形で書面に残しておきたいと考えています。

信託を使った対策
Xは、長女Aとの間で、X所有の自宅不動産及び一部の現金を信託財産をとする信託契約を締結します。 その内容は、受託者を長女A、受益者をX自身とし、信託期間はXが死亡するまでとします。
将来Xが自分で売却することが困難になれば、長女Aは受託者として、自宅不動産の売却ができる(売主が受託者Aになる)ように権限を明記しておきます。
Xが死亡した時点で信託は終了し、信託の残余財産の帰属先を長女Aに4分の3、二女Bに4分の1と指定しておきます。
ポイント

いざ不動産を売却したい時に、所有者Xに判断能力が無ければ、数ヶ月かけて成年後見人を就任させ、家庭裁判所の許可を得てから自宅を売却することが必要になり、時間と手間がかかります。また、不動産売却が契機だとしても、一旦後見制度を利用してしまうと、本人が完治しない限り制度利用をやめることができなくなります。また、弁護士等第3者が後見人に選任されると、報酬を払う必要が出てきます。
信託契約をして、自宅不動産の登記を「受託者 A」という名義に変えたら、長女Aが売主として売却手続きを行うことができますので、その際にXの判断能力の有無は一切問題にならなくなります。なお、「委託者=受益者」なので、贈与税・不動産取得税の課税は発生しません。
X死亡により信託が終了した時点で、残余財産の帰属先が信託契約の中で指定されていますので、Xが遺言を書いたのと同じ効果があります。ただし、遺言はいつでもXが勝手に書き換えることができますので、Bがひょっこり帰ってきて、Xを騙して書き換えさせる恐れがあります。しかし、信託契約は、内容の変更に制限を加えることができます(具体的には、信託契約の変更には、受託者と受益者が合意しなければ変更できないようにしたり、残余財産の帰属先の条項部分は変更不能にしたりできます。)これにより、本件のような姉妹間の確執で、Xの遺言の書換え合戦が起きるような事態も排除することができます(信託契約締結後の遺言では、信託財産に関する資産承継の指定は及びません)。

つぎは家族信託の必要性について説明します。

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銀行にお金を預けっぱなしにすると、どんどんお金が減っていく?
■休眠口座の存在がわからなくなるケースは頻繁にある
 2019年12月5日、NHKのニュースでこんな報道がありました。

「大手銀行の三菱UFJ銀行は一定期間、取り引きがない口座から手数料を取る方向で検討に入りました。長引く低金利で経営環境が厳しくなっているためで、預金者から手数料をとることになれば大手金融グループ3社では初めてとなります」

「三菱UFJ銀行は、現在は口座を持つのに手数料はかかりませんが、2年間、出金や入金などの取り引きがない口座からは手数料をとる方向で検討しています」
とのことです。このような保管料は、日本人からすると驚きですが、海外では割とよくあります。今後、ほかの銀行も追随する可能性も高いと思われます。

 今後、手数料が取られることになると、相続争いが長引いて事実上の財産凍結や、認知症等で事実上の預貯金凍結になった場合、財産が目減りしていくことになる可能性があります。
こうした銀行の休眠口座が、時効で銀行のものになることはありませんが、認知症発症後や相続時に、本人や被相続人がどこの銀行にいくら持っていたか、休眠口座の存在がわからなくなるケースは頻繁にあります。


 銀行に名前や生年月日を伝えて問い合わせれば、自分の口座があるかどうかは調べてもらえますが、本人以外は教えてくれません。
 また、本人でも、教えてもらうためには、口座を作った支店の特定が必要になります。
 銀行の本部にはペイオフに備えて各支店の口座を名寄せするシステムが構築されていますが、休眠口座の確認には活用できないとのこと。休眠口座を確かめたければ結局、心当たりのある支店に本人が問い合わせるしかないそうです。
 もし認知症になっていたら……。

 そうなる前に、財産をきちんと整理しておくことが必須でしょう。
高齢でも自分の意志をはっきり伝えられる状態ならいいのですが、認知症になってしまうと、当の親自身の財産を使うことが難しくなる上、口座の手数料だけ取られることになりかねません。

 家族信託の契約書を作成するときは、持ってる財産を全て信託する必要はありませんが、どの財産を信託するか精査します。
なので、自然に財産は整理されることになります。

 

後見人の問題点……久しぶりに親の顔を見たとき、考えておくべきこと
■孝行息子の独断が、最大の親不孝に
子が親を施設に入居させる場合、とくに男性は「母さんの介護費くらいオレが出す」となりがちですが、親の寿命を短く見積もって大変な事態を招く可能性があります
どういうことか説明しましょう。

 ご存知のように、施設には大きく分けて民間の有料老人ホームと、公的な特別養護老人ホーム(特養)があります。
介護付き有料老人ホームの入居には、入居一時金として0〜1億円、月額利用料として10万〜40万円程度が必要です。入居一時金が支払えたとしても、年金だけで月額利用料を賄うのが難しい場合がほとんどです。不足分は貯蓄を取り崩すことになりますが、今後は100歳以上長生きすることも珍しくなく、蓄えが底をつくおそれがあります。


 母親が100歳になる頃には、介護する子どもも70〜80歳に近いでしょう。
そのとき「費用が支払えない」と後悔しても、間に合いません。孝行息子の独断が、最大の親不孝になりかねない上、親の介護で無理をすれば、次は自分の子に負担をかけてしまいます。


 親の介護は三世代に影響することを認識して「親の介護費用は親の資産で賄う」と割り切るべきです。そのために大切になってくるのが、親の財産凍結防止対策です。
当の親が、高齢でも自分の意志をはっきり伝えられる状態ならいいのですが、認知症になってしまうと、親の財産を使うことが難しくなるからです。

■親の財産を使うには後見人をつけるしか方法はない?
後見人さえいれば凍結されてしまった「お金問題」はすべて解決でき、さらに介護施設の入所契約も締結できると言われていますが……。
しかし、後見人や成年後見監督人には以下のような問題点があります。
専門職(弁護士・司法書士等)後見人が選任された場合、もっとも大きな問題は、年間24〜60万円程度の報酬が発生するという点です。10年で240万〜720万円となります。この金額を支払わなくてはいけません。

 また専門職後見人が選任されてしまえば、たとえ家族であっても、後見を受ける親の財産に手が届かなくなります。親の財産はすべて専門職後見人の手に委ねられることになり、1か月に必要な費用だけが与えられる形になるのです。
それ以外の費用は、いちいち「〇〇のためにお金が必要です」とお伺いを立てて、支払いを認めてもらわなければならなくなります。

 一方、専門職ではなく、家族の一員が選任された場合でも問題があります。
家族が「本人は真に望んでいる」と考えたとしても、家庭裁判所がその希望を認めてくれないことが多くあるという点です。

■困ったことになった事例
息子として成年後見人に選任されたAさんはこう語ります。

 「母の死後、認知症の父は介護施設に入居しました。ただ当時、父の認知症の症状は持ち直ししており、普通の会話が成り立ち、父が意思を述べることも多くありました。その日も『今日は私がみんなにご馳走しよう』と言いました。だからこそ父の意思を尊重して、『じゃあ、今日はおごってもらおうかな』と、その飲食代を父の預金から支払わせてもらったのです。


 成年後見人になると、家庭裁判所に1年に1度、財産の収支報告をする必要があるのですが、この出費には『本人の意思とは立証できない』ということで、認めてもらえませんでした。


 同様の理由で、母が元気なときに、親子間で話し合っていた、相続税対策も一切できなくなりました。年間110万円まで贈与税が発生しない『暦年贈与』を実行しようとしたら、裁判所からストップがかかったのです。母の遺産相続についても、父は私に『俺はいらないよ』と言っていましたが、法定相続分に従わざるを得ませんでした


 家庭裁判所としては「認知症を患い、本人の判断能力が低下しているから」という言い分で、こうした行為を認めないわけですが、それでは「自己決定権の尊重」や「残存能力の活用」といった理念は、もはやどこ吹く風です。


 このように、法定後見人の制度は問題点が多いような気がしますし、最後のわがままを叶えてあげることが難しくなるような気がします。


 その点、家族信託・民事信託は、家族間なので高額な報酬はかかりません。なによりも、親御さんの意思を最大限尊重してあげられるのです。


 久しぶりに実家に戻って親の顔を見たとき、「ボケてなくてよかった」と胸をなで下ろすのではなく、「今のうちに対策を考えておかなければ」と、発想の転換が大切です。



有料老人ホームについて
東京都の有料老人ホームに入るには
入居時費用の相場 443.3万円 + 月額費用の相場 25.1万円
が必要になります。

 これに対して、年金の平均受給額は、厚生労働省(2018年12月)の統計によると、

国民年金 単身者/55,615円  夫婦2人分/111,230円
厚生年金 男性/166,668円  女性/103,026円
厚生年金(夫)+国民年金(妻)  222,283円
厚生年金 夫婦共稼ぎ  269,694円

 なお、厚生年金について厚労省では夫婦二人のモデルの想定支給額を公開しています。40年間サラリーマンとして働いた夫と、専業主婦の組み合わせが想定されており、その金額は「221,277円」です。
今回、計算した金額も、ほぼ同じになるので、だいたい、このあたりを一つの目安として考えれば良いでしょう。
ただし実際の年金受給額は、多くの方の場合がこれより少ないのです。


 このように月額費用だけみても、赤字です。この分は預貯金を取り崩したり、私的年金などで賄っているのが現状なので、老後資金が「2000万円足りなくなる」というのは、きわめて現実的な話なのです。

 幸いにして預貯金を2000万円持っているという方の場合、何も心配しなくてもいいのでしょうか? 残念ながら、そういうわけではありません。

 認知症などで意思能力を喪失してしまうと、預貯金の口座は凍結され家族でさえおろすことができなくなります。子どもたちは、親御さんが亡くなるまで、老後資金を立て替えなくてはいけません。
そうならないために、親御さんの財産をしっかり管理することが、親御さんのためにも子どもたちのためにもいい、ということになります。
「家族信託」の仕組みを使って、財産を家族が管理することが大切です。

費用はぢれくらいかかるの?

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